少年シニア 自由形で生きる

人生の最終章を少年に戻って自由形で生きる事に決めた男が出会った風景・言葉・芸術・人

シェルブールの雨傘にみる理想と現実

 

シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]

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  歳をとると段々思い込みが激しくなるような気がします。

レミゼラブル」は全てにおいてうまく行かず、最後まで孤独で悲劇のまま死んでいく男の話だと思っていました。実際読んで見て、一時は市長にまで登りつめ、身を隠しながらも愛する幼女と暮らす男の話と知ったときは吃驚しました。「ああ無情」という題だったことも誤解していた理由かもしれませんが・・

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 実は「シェルブールの雨傘」も同様で、あのロマンチックな主題歌に引きずられたのか、ドヌーヴの美貌に引きずられたのかはわかりませんが、無情な社会の中で男女の愛を貫いた悲劇の物語と思い込んでおりました。

しかしそんな甘ーい話ではありませんでした。

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  シェルブールで母親と傘店を営むジュヌヴィエーヴと自動車工のギイは将来の仲を誓った恋人たち。しかしギイは兵役によりアルジェリアの戦地に赴くことになります。二人は結ばれジュネブェーブは妊娠、ギイが2年の兵役を終えるのを待ちますが、戦況が悪化してギイからの便りは途絶えがちに。そんな中、以前からジュネヴィエーヴに想いを寄せていたカサールが猛アタック。お腹の子供も自分の子として育てるという彼の熱意に、ついに彼女は戦地で生死の状況もわからないギイを見捨ててカサールと結婚してしまいます。

 1年後ギイは戦地から帰り、ジュネヴィエーヴの裏切りを知ります。自暴自棄になったギイを救ったのは幼馴染で以前から彼に恋心を寄せていたマドレーヌでした。彼女の献身的な愛でギイは立ち直り、二人は子供もでき幸せな家庭を築き、ガソリンスタンドを経営するようになります。

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ところが、5年後クリスマスの晩にギイの店に偶然ガソリンを入れに立ち寄ったジュネヴィエーヴと劇的な再会を果たします。

実は私はここから近松真っ青のの愛の逃避行が始まるのかと思いました。ところが、二人は幾分の未練を残しながらも意外とその場であっさり別れます。彼女はギイに「車中で待っている娘と話をするか」と問いますが、ギイは拒否します。逆にここを去ることを促すギイ。最後に幸せかと問うジュネヴィエーヴにギイは幸せだと答え、彼女は去っていきます。その直後マドレーヌと子供が帰り、ギイは笑顔で彼らを迎えます。それで映画はジ・エンド。ほんとに拍子抜けしました。

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 でもよくよく考えると、この映画を悲劇の恋愛ものと観ずに,若い未熟な男と女にありがちな別離をあるがままに描いた映画だととらえれば、中々の佳作ではないかとも思えます。というのも、ここに登場する2組の夫婦は、決して不幸ではありません。あえていえばジュネヴィエーヴでしょうが、夫のカサールは裕福で誠実な男ですので不幸とも言えません。ギイの兵役はもともと2年で、実際は1年半で戻ってきたわけですから、少々、我慢がない女性とも言えます。再会のときにも詫びるような言葉はありませんでした。母親同様、ギイの将来性に幾分懸念があったのかも知れません。観る人によって、様々な感想や評価がわかれそうで、その点でもユニークな映画と言えるでしょう。

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 小説であれ映画であれ、思い込みのため、見誤って評価している作品が多そうなので、この際きっちりと、気になる作品は実物を確かめておこうと思います。