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少年シニア 自由形で生きる

人生の最終章を少年に戻って自由形で生きる事に決めた男が出会った風景・言葉・芸術・人

切り絵にみる人の心を動かす紙の力

紙関連の仕事を約20年ほどしていました。

この数年仕事を通じて、関係者からも紙の未来に悲観的な声を聞きました。

もはや紙の時代ではないと言いますが、本当にそうでしょうか。

確かに消耗品としての紙の時代は、すでに終焉を迎えているのかも知れません。

しかし、人の心を動かす貴重な素材としての紙は、益々活躍の場を拡げると

私は信じています。紙の力はそんなやわなものではないのです。

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先日、図書館で「紙のむすめ」という切り絵を基調とした絵本を読みました。

文はナタリー・ベルハッセンさん、絵(きり絵)はナタリー・シャビラさん。 

ともにイスラエルの作家です。(訳は もたい なつうさん)

紙のむすめ

 

主人公は、白い紙から生まれた娘です。娘は白い紙でできた家にすんでいます。

彼女は自由ですが、一緒に話をする相手がおらず淋しくて仕方がありません。

それでドレスから紙を切って、気球をつくっては空のうえから、

また船をつくって島々を巡って話し相手になってくれる友達を探します。

しかし人の姿は見当たりません。どんどん紙はなくなってきます。

娘は、友達をみつけることができるでしょうか・・・

 物語にあわせて掲載されている切り絵がファンタジックな世界をつくっています。

切り絵によって、娘の孤独や悲しみや喜びが見事に表現されています。

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さて国内で切り絵というと、私の世代では滝平二郎さんということになります。

新聞の日曜版の巻頭に掲載されているのを見て、独特の世界観に圧倒されました。

特に大人になりかけている少女の描写が素晴らしいと感じます。

 

ふるさとの風と雲―滝平二郎画集

きり絵は、版画以上に繊細な動きの描写を伝えます。

この表紙も、少女の髪の毛や草の動きで風の強さが伝わってきます。

私は仕事で、よく「紙は生き物だから」と編集者に話しましたが、

滝平さんのきり絵をみていると、それがよくわかります。

作家である滝平さんと、素材である紙とが協力しあって、

生命が静かに息づいている世界をつくりだしています。

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閉塞感のある社会だからこそ、紙によって広がる世界があります。

年賀状も紙だからこそ深く伝わる部分があります。

人間がそんな紙の良さをうまく引き出せていないのかもしれません。

紙の世界とデジタルの世界は補完しあうものです。

今年も、素敵な紙の使い方に注目していきたいと思っています。