少年シニア 自由形で生きる

人生の最終章を少年に戻って自由形で生きる事に決めた男が出会った風景・言葉・芸術・人

「アンナ・カレーニナ」を読んで浮かんだ二つの言葉

 お元気ですか。少年シニアです。

あのドストエフスキーが、「こんな完璧な作品は他にない」と絶賛したという

トルストイの「アンナ・カレーニナ」を読みました。

こちらドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」と同様、様々なテーマが織り込

まれた大長編小説でしたが、「カラマーゾフの兄弟]がこてこての戯曲なら、こち

らはさしずめテンポよく進んでいく映画のような感じで読めました。 

アンナ・カレーニナ〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

 

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 読み終わった後に、浮かんだ言葉が2つあります。

一つ目の言葉は「自滅」です。この小説は、人妻アンナの自滅の物語です。

小説に最初に登場した時のアンナは、理知的でバランス感覚に富み、慈愛に溢れる

成熟した女性でした。夫(アンナの兄)の浮気に苦しむ義姉のドリーを気遣いなが

らも、兄の浮気が単なる一過性のものであり、理性をもって対応すれば夫婦愛は必

ず元に戻ると諭し、ドリーの心を和らげ離婚という事態を防ぎました。

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ところがアンナ自身は、青年伯爵ヴロンスキ―と恋に陥るや、普段から夫との関係

が冷めていたこともあり、行き当たりばったりの行動でヴロンスキーとの恋に突っ

走り、家族のもとを去ります。その中で、夫のカレーニンは傷つき、実の息子セリ

ヨージャも悲しみにくれます。

それでも、実兄の助力で夫のカレーニンも渋々ながら離婚を容認し、晴れてアンナ

はヴロンスキーと結ばれ、彼との子も授かりました。

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ところが夫が離婚を容認しようとしたのに、それにアンナが逆に応じないという極め

て不可解な行動をとって話をこじらせてしまいます。

そんなアンナは社交界からも拒絶されますが、中にはアンナを支えようとする人もあ

らわれます。しかし、アンナは満足できません。そのうちヴロンスキーに対しても、

自分への愛が冷めてきたと思い込み、彼の自由を束縛し暴力的な言葉で責めるように

なりました。いわゆる「手におえない」状態に陥ってしまったのです。

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 ヴロンスキーがアンナの言い分を認めれば、その瞬間は愛すべき女性として振る舞

いますが、時が経ちひとたび意見の対立がおきれば、それを自分への愛のなさとして

責めたてます。

そんな中、ついにアンナの精神の乱れが沸騰点に達し、自死によって自らの苦悩に終

止符をうち、そのことでヴロンスキーが自責に苛まれることを願うようになります。

そして彼女は、駅に入ってきた列車に身を投げて命を絶ちました。


映画『アンナ・カレーニナ』本予告編

 

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 アンナは、虚偽に満ち溢れた貴族社会で真の愛に生き、それを貫いた悲劇のヒロ

インなのでしょうか。それにしてはトルストイのアンナの描写は容赦ありません。

そもそも彼女は本当にヴロンスキーを愛していたのでしょうか。

トルストイは「愛されている自分」にひたすら固執する、自己愛が肥大化した女性の

自滅するプロセスを怜悧に描こうとしたとしか思えないのです。

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  私はアンナの自己愛を笑うことはできません。私も自己愛の塊のような人間ですし

自滅していく傾向がありますから。

ただ私は最終的に自己を愛せない者は他者も正しく愛せないと思っていて、自己愛は

人生において欠かせぬものだと考えています。仮に四面楚歌の状態になっても「自分

への信頼感」があれば、何とかきりぬけることができるとも思っています。

その一方で、他者を愛せない人生は非常につらいとも思います。私が50歳をすぎて

生命の在り方を科学的に知りたいと考えたのも、この自己をいかしている大きな生

命の体系を知り、それを愛したいと思っているからです。それは「自己愛」を超え

た「大愛」とよべるもので、まだ私はこの大愛の境地に達していません。

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 そう、この小説を読んで浮かんだもうひとつが「大愛」という言葉でした。

アンナの悲劇は、この「大愛」の欠如にあったと思うのです。最も愛する自分を支え

てくれているものは何か、少しでもそこに気持ちをむければ、過剰な自己愛で自分を

がんじがらめにすることも、妄想に苦しむこともなかったのではないでしょうか。

 

 

 *明日から1週間、大きな生命に触れ、大愛を感じたく念願の小笠原諸島に旅に

  出ます。戻ったらまたブログでもご紹介したいと思っています。