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少年シニア 自由形で生きる

人生の最終章を少年に戻って自由形で生きる事に決めた男が出会った風景・言葉・芸術・人

死ぬことは生きること 「聖の青春」を観て

お元気ですか。少年シニアです。

ようやく時間がとれ「聖の青春」を観ました。期待を裏切らない良質な映画でした。


11月19日(土)公開 映画『聖の青春』予告編

 

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私が将棋を始めたのは10歳ぐらいだったと記憶しています。

めきめき才能を開花させてとは行きませんでしたが、さすが頭の柔らかい頃

でそれなりに上達して、当時大阪の北畠にあった関西将棋会館の月例会にも

出入りするようになりました。それからもう50年弱、付き合い方に濃淡は

ありましたがずっと将棋の世界に魅せられてきました。

そして自分が将棋に打ち込めば打ち込むほど、プロ棋士の凄まじい将棋技術

と強い精神力に畏敬の念をもつようになりました。

若手棋士などは一見子供っぽく青二才に見える者もいますが、なかなかどうして

武道家に勝るとも劣らない勝利の執念を彼らはみせてくれるのです。

まさに頭脳の格闘技が将棋の本質なのです。

とりわけ、中盤に入って一見手詰まりになった局面から、数十手先まで読みきった

うえで、戦端を仕掛けていく構想力、さらには終盤になって秒読みになってからも

正確な指し手でピンチをしのぎ、勝ち切る強い勝負への執念。

尋常な世界ではありません。

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 本映画の主人公の村山聖はこんな凄まじい世界で幼少の頃から病魔と闘いながら

20歳半ばでタイトル一歩手前までに迫った天才棋士の一人でした。

最強羽生善治との対戦成績は、6勝8敗(うち1敗は不戦敗)で、ほぼ互角。

これは羽生の強さを知る者にとっては驚異的な数字です。西に怪童村山ありと言わ

れたのもむべなるかなと思います。

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 私はこの映画を観る前に二つのことをしようと考えました。ひとつは元将棋世界

の編集長で本映画の原作者でもある大崎善生氏の「聖の青春」を読みこむこと。

もうひとつは、村山と羽生の対局棋譜を実際並べてみて、その闘いの履歴を自身の

頭の中に焼き付けることでした。時間をかけてじっくり両者の指し手の意図を感じ

ながら、数日かけて棋譜を追っていきました。

それは私にとって至福の時間でした。

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 いつ死ぬかわからないという状況の中で、村山ほどその目の前の対局に心血を注い

棋士はいなかったでしょう。中終盤からの踏み込み方や、終盤の驚異的な粘り腰も

そうした村山が背負っていた運命が大きく影響していたことは間違いありません。

そして必ず名人になるという夢へのあくなき執念が村山の人生の密度を高くしたで

しょう。また将棋のみならず普通の若者としての青春を謳歌しようとしていたことも

本映画でも丁寧に描かれいました。

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でもよく考えれば、我々自身もいつ死ぬかわからぬ身です。生を得た瞬間から我々

には死がつきまとっていることを忘れてはいけません。野性に生きる動物たちは

まさにこうした状況の中で日々を生き抜いているのですから。

死は私自身の目の前にある、そのことを原作・映画を通して強く強く感じました。

 

村山が亡くなった年の将棋年鑑棋士アケートに彼はこのように回答しています。

  今年の目標は? 

       ➡ 土に還る

  行ってみたい場所は

       ➡ 宇宙以前

 

死と真正面から向き合った者だからこその魂の回答に心から泣けました。

 


【将棋名局解説】伝説の村山聖九段(28歳) VS 羽生善治4冠・森内俊之